- 2008年4月7日
- 睡眠
抗不安薬、睡眠薬について4
薬物の血中濃度と薬理作用の目安が半減期です。単回の服用後血中濃度がピークを迎えるまでの時間がTmaxと定義され、そのときの濃度がCmax、Tmaxから1/2Cmaxになるまでの時間が半減期です。定期的な服用では、半減期を迎える前に次の薬剤を服用する場合が多く、定期的な服用で血中濃度がかなり安定してきます。抗不安薬では血中濃度の安定した状態を得ることで、長期にわたり不安のレベルを下げることが期待されます。
薬物の血中濃度と薬理作用の目安が半減期です。単回の服用後血中濃度がピークを迎えるまでの時間がTmaxと定義され、そのときの濃度がCmax、Tmaxから1/2Cmaxになるまでの時間が半減期です。定期的な服用では、半減期を迎える前に次の薬剤を服用する場合が多く、定期的な服用で血中濃度がかなり安定してきます。抗不安薬では血中濃度の安定した状態を得ることで、長期にわたり不安のレベルを下げることが期待されます。
抗不安薬、睡眠薬ともにベンゾジアゼピン系薬剤だけでもそれぞれ10種類以上あり、ひとつひとつに特徴があります。効果や作用時間の長さに違いがあります。服用すると何時間後に効いてきて何時間後かには完全に薬物の作用が消失すると考える方が多いのですが(それはそれで間違いとは言いませんが)、薬物が体内から完全に抜けるにはかなりの日数を要します。半減期という概念があります。服用後薬物の血中濃度のピークの半分になるまでの時間です。これが5(10)時間とすると、ピークの1/4までが10(20)時間、1/8までが20(40)時間となります。主観的に薬が切れてきたと感じても、体内にはまだ薬物は残存しています。これは悪いことではありません。定期的に服用すれば血中濃度の安定が得られるからです。
依存性の点ではこれらはアルコールより安全です。しかし量の問題があり、服用量がどんどん増えたり、作用時間の短いものや抗不安作用のシャープな薬物を渇望するようになるとこれは立派な「依存」です。これら薬物に詳しい医師が常識的な常用量を超えて処方することは通常ではありえません。
これらは通常、ベンゾジアゼピン系薬剤に属します。抗不安、沈静・催眠、抗けいれん、筋弛緩などの作用が主たるものです。催眠作用が強ければ睡眠薬に、抗不安作用が強ければ抗不安薬に分類されます。安全性が高く、値段も安いという利点があります。GABA系という神経の沈静・抑制系に作用します。アルコールもGABA系に作用します。ベンゾジアゼピン系薬剤の依存性については存在を否定しませんが、アルコール依存と比較すれば、依存に対する安全性も直観的にご理解頂けるかと存じます。
昼夜逆転の治療は簡単ではありません。夜23時から翌朝6時までの睡眠を目標とした場合、7〜8時間の睡眠相のズレを前方に改善しなくてはなりません。実際は数ヶ月をかけて治療しますが、人の体内時計は25時間周期ですから、途中改善が見られても気を抜くと後方に行きやすいためすぐに昼夜逆転に戻ってしまうのです。入眠時刻を早めるよりは起床時刻を早める発想のほうが適切です。ただし無理に起こしても、自律神経やホルモン系はまだ眠っているので起こされた本人は苦痛を感じます。うつ状態で朝の調子が悪いことや二度寝が生じやすいこともこの理由で一部説明可能です。
人の本来の25時間周期を24時間に同調させる外的な因子はいくつか考えられます。朝日であったり、目覚し時計の音、正午のチャイム、終業時刻、日々の日課等です。これら同調因子の刺激を受けて、私たちは24時間周期で生きています。外的な刺激がないと25時間周期となり、睡眠・覚醒リズムが一日一時間ずつ遅くなってくる訳です。最大の同調因子は朝の日光です。これに暴露されるとその14時間後に脳内のメラトニンという一種の睡眠物質が増加します。朝日は外的因子であり、内的な睡眠物質を誘導している訳です。
24時間周期を持つ体内のリズムは睡眠-覚醒だけではありません。体温や血圧、ある種のホルモン等も24時間周期を有しています。大雑把な言い方ですが、自律神経のリズムも24時間周期です。昼夜逆転の状態ではこれらリズムも昼夜逆転していると考えられます。昼夜逆転で固まった人が無理に日中覚醒しているとします。しかし自律神経は眠った状態のままです。頭の覚醒と体の覚醒の位相がずれた状態です。これでは、起きている時の体調が優れず、頭も回転しないのは当然です。
通常、人間の体内時計は約25時間周期です。社会的時計(地球の自転)は24時間ですから、放って置くと人間は毎日一時間入眠や覚醒時刻が遅くなってくることになります。25時間周期を24時間周期に同調させる刺激によって、24時間周期で生活しています。その刺激(同調因子)にはいくつかありますが、最も重要なものは太陽です。人工的な光がない時代ではおそらく人間は日の出とともに起き、日の入りとともに入眠したのではないでしょうか?
睡眠相が遅延して固定する状態があります。簡単に言えば、早寝早起の逆です。この極致が昼夜逆転です。本人が起きている時は社会が眠っており、本人が眠っている時は社会が起きていることになります。これを元に戻すことはかなり困難です。その理由について次回より考えていきたいと思っています。
うつ病での典型的な不眠は、睡眠中断(中途覚醒)と早朝覚醒です。寝付きは案外スムーズです。夜中に何度も目が覚めたり早朝に覚醒してそのまま起床時刻まで再入眠ができません。日中には眠気が出現し、睡眠と覚醒のメリハリがなくなります。その意味でうつ病は睡眠と覚醒のリズムを撹乱する病態とも言えます。この撹乱は起床後なかなか気分や体が活動を開始しないというモーニング・メランコリアとも関係します。うつ病の治療開始時に、「睡眠薬が残って朝方眠くてしょうがない」との発言が患者さんからよく聞かれますが、うつ病自体が寝起きが悪いこともあり、睡眠薬か残ったか否かは微妙です。専門医がいきなり長期作動型の睡眠剤を処方することはまず無いのではないでしょうか?