和歌山県和歌山市美園町のメンタルクリニックおおや

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おおや通信
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うつ状態、うつ病について15(回復のために5)

重篤なうつ状態では休養と服薬が大切であり、激励や気晴らしは却って病状を悪化させることは多くの方がご存知であると思われます。それでは職場や学校に戻るといった所謂社会生活を送るまで休養と服薬の一点張りかといえばそうではありません。行動療法的に考えれば徐々に日常生活に慣れていく、認知療法的には現実的な思考を回復することが重要です。うつ状態が重ければ重いほど、行動や思考は遅延・狭隘化し、弱気な割には他者の助言を受け入れ難くなり易いのです。この謂わば「頑迷さ」をほぐしていかなければなりません。抗うつ薬の進歩がこのような認知・行動療法的配慮を軽視しなければ幸いです。

うつ状態、うつ病について14(回復のために4)

「人生は何の為に存在するのか?自分の存在価値は?」という問いはずっと繰り返され、ずっと答えのないまま今後も繰り返されることでしょう。この問いは極めて高次元のものであり、精神科臨床のレベルでは答えることはできません。もし自殺を考えている方がおられたら、「自殺を考えること自体意思自由ではないので自由意思を回復するまでは生命を保護する」というパターナリズムが許されてもいいのではないかと思います。うつの方でも自殺を強く意識するのはほんのわずかな時間だとされます。また厳しい状況が継続してもうつ状態の回復は見込まれます。自殺願望はそんなには長続きしないのが生物としての人間です。

うつ状態、うつ病について13(回復のために3)

うつ状態の治療で最も大切なのは休養であることは前述しました。学校や仕事のために休養が十分にとれないことはよくあります。実際、薬物治療を受けながら通院・通学をする方はたくさんおられます。治療的な観点からはこれは中途半端な治療なのですが、社会的観点からは致し方のないことかも知れません。したがって休養するかどうかの分岐点は病状の程度と周辺状況の組み合わせで決まってきます(重症で本人の意思を尊重し難い場合も稀にあります)。また休養するか否かで薬剤の処方もずいぶんと違いがあります。「休んで頂いたら思い切った薬物治療もできるのに…」と思うことがよくあります。うつになる前に休養を上手にとりたいものです。

うつ状態、うつ病について12(回復のために2)

うつ状態とは簡単に言うと精神的エネルギー水準の低下した状態です。気分を景気に喩えれば不景気です。景気対策としては、ケインズ的財政政策、小泉的構造改革、フリードマン的金融政策、森下泰(森下仁丹創業者)的ケチケチ大作戦等があります。財政金融政策は薬物治療に、構造改革は環境調整に、ケチケチ大作戦(エネルギーを貯め、その無駄遣いをやめる)は休養に概ね相当します。治療は謂わばこれらのポリシーミックスですが、最も痛みを伴わないのが休養です。抗うつ薬の過量投与や周囲との軋轢が最も少ない訳です。

うつ状態、うつ病について11(回復のために1)

回復の基本は休養です。ただしこの休養の意味が難しいのです。一般に休養というと、休暇をとる、休職する、残業を減らす、労働時間を短縮する等ですが、休養の最中に自ら課題を設けたり、多少のエネルギー回復で元のペースへ戻ろうとしたりしてしまうケースが多いのです。うつの症状や治療薬はそれほどバリエーションはありませんが(重症度や適合する薬剤は夫々ですが)、休養の考え方は多種多様で、なかには「休養」の意味を勘違いされている方も多いのが現状です。

うつ状態、うつ病について10(強制水泳テスト)

動物モデルにより様々な疾患が研究されます。うつ状態では強制水泳テストがあります。マウスを水流に晒しエンドレスに泳がせるという動物愛護団体からはお叱りを受けそうなモデルです。あきらめて泳ぐのをやめる時間(無動時間)がうつの程度の指標とされます。抗うつ薬を処方されたマウスは無動時間が短縮されるそうです。実際の臨床では、抗うつ薬を処方するより水流を止めるべきです。

うつ、うつ状態、うつ病について9(社会病理論)

かつて、不登校やひきこもりという一種の「やる気のなさ」に対して退却や回避の修飾語がついた「抑うつ」が議論されました。個人の病理とともに社会病理も議論されました。また抑うつの状態像が古典的な抑うつと異なることもポイントでした。疲弊うつ病の概念もかなり社会病理の視点を含んでいます。疲労困憊からうつ病への深化を促進する要素を現在社会が有していることは推測できます。ただし社会病理論は実証や検証の点で曖昧な部分を含んでいます。その点で医学的な研究のテーマには向かない宿命を有しています。むしろ社会学や心理学が多くを語る状況です。

うつ、うつ状態、うつ病について8(病前性格論の終焉?)

ある種の性格特性がうつとの親和性が高いことは否定できません。しかしどのような性格傾向の方でもうつになりえると考えられます。例えば、睡眠時間を削ってまでの残業を継続すれば、徐々に頭の回転は鈍り、怒りっぽくなり、体調はすぐれず、うつの入り口まで来ます。この傾向は病前性格とは無関係でしょう。

ある種の性格特性がうつとの親和性が高いことは否定できません。しかしどのような性格傾向の方でもうつになりえると考えられます。例えば、睡眠時間を削ってまでの残業を継続すれば、徐々に頭の回転は鈍り、怒りっぽくなり、体調はすぐれず、うつの入り口まで来ます。この傾向は病前性格とは無関係でしょう。

うつ、うつ状態、うつ病について7(景気変動とのアナロジー)

英語では不景気をdepressionと言います。また、うつもdepressionと言います。ともに「通常より下がった状態」を指します。景気も気分もmood(ムード)です。経済学での1929年の世界大恐慌はThe Great Depressionで、精神医学での大うつ病はmajor depressionです。depressionはmoodの状態であり、変化ではありません。うつ病の回復期はmoodは変化として上向きですが、まだまだうつ状態であることをご認識下さい。

英語では不景気をdepressionと言います。また、うつもdepressionと言います。ともに「通常より下がった状態」を指します。景気も気分もmood(ムード)です。経済学での1929年の世界大恐慌はThe Great Depressionで、精神医学での大うつ病はmajor depressionです。depressionはmoodの状態であり、変化ではありません。うつ病の回復期はmoodは変化として上向きですが、まだまだうつ状態であることをご認識下さい。

うつ、うつ状態、うつ病について6(不安とうつ)

不安とは「対象の不明確な漠然とした自己不確実感」です。うつ状態では、過去には後悔、将来には悲観が伴うのが通常です。将来の悲観が、漠然としていれば不安であり、対象が明確であれば恐怖です。恐怖が訂正不能な誤った確信となれば、心気・罪業・微小・貧困等の妄想となります。うつ状態で妄想にまで至れば重症のうつ病です。

不安とは「対象の不明確な漠然とした自己不確実感」です。うつ状態では、過去には後悔、将来には悲観が伴うのが通常です。将来の悲観が、漠然としていれば不安であり、対象が明確であれば恐怖です。恐怖が訂正不能な誤った確信となれば、心気・罪業・微小・貧困等の妄想となります。うつ状態で妄想にまで至れば重症のうつ病です。