- 2008年4月30日
- うつ
過重労働によるうつ病
うつ病の原因が労務によると判断されるケースが増えています。労基局や民事裁判で認定をめぐって争われることもあります。過重労働か否かは残業時間数を基準にすることが多いようですが、他に客観的な基準を設けにくいこともあるようです。
うつ病の原因が労務によると判断されるケースが増えています。労基局や民事裁判で認定をめぐって争われることもあります。過重労働か否かは残業時間数を基準にすることが多いようですが、他に客観的な基準を設けにくいこともあるようです。
(以下は再記です。)
睡眠障害は不眠、中途覚醒、早期覚醒、過眠、浅い睡眠、日中の眠気等が指摘されますが、要は一日の睡眠・覚醒リズムの障害(夜間と日中の覚醒水準の差が小さい)と睡眠中断のし易さに集約されると考えられます。このうち治療としては後者がターゲットであり、無理にでも眠前に睡眠薬や鎮静作用の強い抗うつ薬を服用して頂き、睡眠の中断を回避しようとします。朝に眠気を感じられる方が多いのですが、眠前薬の持ち越しというよりはうつ状態による覚醒の立ち上がりの悪さが原因であると考えられます。作用時間や半減期から考えて、薬の影響とは考えにくい場合が多いのです。
「気分変調性障害」という診断名があります。「だらだらとうつ状態が長く続く」病態です。何故長期間持続するかははっきりしていないようですが、療養の不味さや性格傾向等の要因が指摘されます。ただし、療養の不味さや性格傾向を明確に判別する基準というものは曖昧です。経験的には、「気分の改善があっても、身体的なリズムが悪い」との傾向があるようです。
うつ状態では自律神経症状が出現します。便秘や口渇、動悸、めまい、頭痛、胃部不快等がよく出現します。実際、感情の中枢(大脳辺縁系)と自律神経の中枢(視床下部)は解剖学的に接近しています。気分の変調は感じないのに体調が悪い場合で身体医学的検査で何も異常がないときは、「うつ」とまでいかなくともうつ的になっている場合があるのです。
「うつ」自体は気分を表す言葉ですが、うつ状態では睡眠障害や自律神経症状等も伴います。睡眠障害は不眠、中途覚醒、早期覚醒、過眠、浅い睡眠、日中の眠気等が指摘されますが、要は一日の睡眠・覚醒リズムの障害(夜間と日中の覚醒水準の差が小さい)と睡眠中断のし易さに集約されると考えられます。このうち治療としては後者がターゲットであり、無理にでも眠前に睡眠薬や鎮静作用の強い抗うつ薬を服用して頂き、睡眠の中断を回避しようとします。朝に眠気を感じられる方が多いのですが、眠前薬の持ち越しというよりはうつ状態による覚醒の立ち上がりの悪さが原因であると考えられます。作用時間や半減期から考えて、薬の影響とは考えにくい場合が多いのです。
うつ病の治療を開始し病状が回復したとします。あとどれくらいの期間抗うつ薬を飲み続ける必要があるかは大きな問題です。その期間は病状や環境、初発か再発か等の条件で大きく異なるところです。例えば、再発や躁鬱病の方は予防的な服薬はかなり長期になると考えられます。反応性のうつ病では重荷が取れたり環境が良くなれば中止し易いでしょう。現実には、良くなったから患者さんの判断で中止するとか良くならないので治療者を変える等で、来院しなくなる場合が多いのです。抗うつ薬中止後のデータは余り無いのが現状でしょう。
先日NHK教育テレビでうつ病についての番組がありました。そううつ病に罹患歴のある男性俳優が出演していました。彼のうつ状態に関する話は大変参考になる内容で、そこまで上手く言語化できるのかと感心しました。さすが俳優です。うつ状態下では思考が制止気味で、自分の辛さをなかなか言語化できません。改善したからこそ言語化ができるのです。制止とはブレーキが掛かって前に進まない状態です。くよくよと同じことを考えてしまいます。
うつ状態やうつ病で学校や会社を休まれた方が復帰する場合、いくつかの注意点があります。気分的なうつの回復が十分でも、疲労し易かったり、朝起きが悪かったり、日中の眠気が強かったりします。休養中に驚くぐらい体力や集中力が落ちているものです。従って、いきなり元のペースで戻ろうとすると失敗のリスクが上がります。「もう大丈夫」と簡単に考えてはいけないと思います。心の中にブレーキを携えて下さい。
「うつ病は治るのか?」という議論があります。「治る」という概念を「服薬をまったくせずとも普通に生活できること」と考えると、半分以上の方は「治り」ます。ただし再発はあり得るし、気分変調性障害のように年余にわたる場合があります。再発の回数が多いほど、エピソードが長いほど難治性が高くなりますが、完全に治癒しなくとも付き合っていけるものです。
以前、うつ病の病勢期に認知療法や行動療法がなじまないことを述べました。そこまでの系統だった心理療法のみならず、本人への分析的な関与や状況を本人に語って頂くことも躊躇われることが多いのです。思考は渋滞し、時には制止していることがあり、会話を交わすことがご本人にとって苦痛である場合があります。また、否定的な認知や自信喪失から、語りかけの言葉を非難や叱責に感じられることもあります。「励まし」すら非難や突き放しに感じられることがあります。「うつ病は改善すること、今は休息と服薬が大切であること」等を簡潔に説明するにとどめることが大切です。これらは、重篤なうつの場合特に当てはまります。