和歌山県和歌山市美園町のメンタルクリニックおおや

JR和歌⼭駅ステーションビルMIO 5F

診療予約(予約優先)

073-427-0008

おおや通信
NEWS

うつ状態、うつ病について25

うつ病の①病勢期の前には、病前期が考えられます。大きな心理的ショックによりうつ状態が比較的速やかに出る場合(適応障害によるうつ状態)もありますが、発症前の前段階としての病前期が想定される場合が圧倒的に多いと考えられます。疲労感や不眠、食欲不振や身体的不定愁訴が気分の抑うつより以前に存在します。ただし、それら症状があるからといって必ず診断基準を満たすうつ状態に陥るとは限りません。「疲れているから休む」という当たり前のことが出来にくい時代です。ご注意下さい。

うつ状態、うつ病について24(治療6)

うつ病の治療法は、薬物療法や精神(心理)療法に大別されますが、これらの組み合わせ方や比重は治療の時期や患者さんの病状や周辺状況に依存します。うつ病の経過を①病勢期、②回復期、③リハビリ期に分けられるとします。
①の時期は休養と服薬が主であり、認知療法や行動療法は通常行いません。
②では睡眠・覚醒リズムの改善や薬物の副作用の確認、短時間の精神療法が中心です。
③では職場や学校に戻るための生活リズムの改善や活動する自分のイメージ形成、再発しないための心がけの形成等が大切で、行動療法や認知療法が役立ちます。
最後に、患者さんが自分の弱点に気づいて頂ければ、スムーズに会社や職場に復帰できます。

うつ状態、うつ病について23(治療5)

SSRIやSNRIといった新しい抗うつ薬は爆発的と言えるほど処方されています。これを、「うつ病患者さんが増えた」とみるか、「安易に処方されすぎている」とみるかは意見の分かれるところです。私見としては、そのどちらも正解のように思います。副作用は少ないもののやはり存在しますし、古いタイプの抗うつ薬に良好に反応する患者さんもたくさんおられます。抗うつ薬の種類も量も診察を通して試行錯誤するしかないのだと思っています。

うつ状態、うつ病について22(治療4)

数年前から抗うつ薬としてSSRIとSNRIが登場しました。前者はセロトニン系に、後者はセロトニンとノルアドレナリン系に選択的に作用するとされています。それまでの抗うつ薬はコリン系を遮断することで副作用(便秘、口渇、眠気、霧視等)が生じました。この抗コリン作用が無いという点がSSRIやSNRIの利点とされています。

うつ状態、うつ病について21(治療3)

抗うつ薬の歴史は三環系抗うつ薬から始まります。これらでは便秘や口渇、排尿困難、眠気や倦怠感が副作用として問題でした。これらはうつ状態の特徴的な症状でもあり、服薬により病状が悪化したように思われる患者さんが多くおられました。この副作用をマイルドにしたのが四環系抗うつ薬です。10年ほど前までは、これらに抗精神病薬(焦燥感や自殺念慮の強い場合)をミックスして薬物治療が行われていました。服薬自体がかなり辛いものだった訳です。ただし数ヵ月後の治療成績自体は悪いものではありませんでした。

うつ状態、うつ病について20(治療2)

治療の第一は休養ですが、なかなか休養を受け入れられる状況でなかったり、受け入れることに抵抗される方が多いのが現状です。第二は薬物療法です。うつ状態では脳内のセロトニン、ノルアドレナリンが不足していると薬理的には考えられています。それらの不足を補うのが抗うつ薬です。認知療法等の心理的関与(非薬物的治療)にも一定の効果はありますが、ある程度状態が改善してからでないと意味はないと考えられます。

うつ状態、うつ病について19(治療1)

疲弊によるうつ病の治療の第一は疲労の回復(休養)です。適応障害的なうつ状態では原因の除去や本人の対応や心的処理方法を考えることが重要です。身体的要因(甲状腺機能低下症やホルモン異常(所謂更年期障害)等)によるうつ状態では身体的な治療が重要です。しかし何れのケースであっても、抗うつ薬の服用は有効であることが多いのです。うつの原因やひきがねが如何様であっても、脳の中の状態はほぼ一様です。そこに抗うつ薬が作用するわけです。

うつ状態、うつ病について18(診断3)

現行診断基準では原因論や病前性格論が登場せず、もっぱら症候論的記述の診断基準を満たすか否かで診断されることは前述しました。この診断基準の立場を操作主義といいます。よく「ストレスでうつになった」との表現がなされますが、このような原因論的な考え方を診断基準は採っていません。原因論的な記載は主観性を排除できない訳です。ただし、所謂ストレス(ストレッサーと表記すべきでしょうが)がうつの引き金にならないとは誰も考えないでしょう。

うつ状態、うつ病について17(診断2)

かつては「内因性うつ病」と「神経症性うつ病」という診断名がありました。前者は執着性や熱中性、配慮性、几帳面、生真面目等の病前性格を有する者が、ストレスフルイベント(昇進、引越し、荷降し等)を引き金にして生じるうつ病で、後者は本質的には神経症であるがうつ状態が前景にでるものでした。抗うつ薬に対する反応は前者が後者を上回るとされました。また後者はそれほど重篤でないうつ状態が年余に渡ることもあるとされました。現行のICDやDSMでは、病前性格や引き金或いは特定のストレスフルイベントは診断基準には含まれず、いくつかの症候論的な基準のうち閾値以上の症状が一定数を超えるという考え方で診断します。

うつ状態、うつ病について16(診断1)

うつ病に限らず、精神医学的診断基準が曖昧であることは認めざるをえません。DSM(アメリカ精神医学会)やICD(世界保健機関)の診断基準の存在は、曖昧さの克服の点では有益です。しかしそれは専門家にとってほど一般には有益ではありません。診断基準を理解し使いこなすことは一般の方には無理であるし、そもそも不必要だからです。そこで自己診断のチェックシート等が登場しインターネット等で公開されていますが、「そこで陽性だから自分はうつ病だ」とはいきません。擬陽性の問題や他の疾患との共存や合併を伴う等の問題が生じます。さらに、うつ病以上に、発達障害や人格障害、ストレス性障害や社会不安性障害等では益々曖昧になります。疾患概念自体が現時点では流動的であるし、障害の程度を判断する際に社会的な観点を要するからです。