和歌山県和歌山市美園町のメンタルクリニックおおや

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おおや通信
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睡眠について5

人は何故眠るのか、眠らないといけないのか? ひとことで表現はできませんが、断眠テストからは色々なデータが得られています。動物では脳細胞(特に大脳皮質)が死滅し、人ではイライラしたり記憶力が落ちたりします。記憶力は不眠で悪くなるのですが、心地良い記憶より嫌な記憶のほうが相対的には残存するそうです。疲労回復、頭すっきりのために睡眠は必要なようです。

うつ状態、うつ病について13(回復のために3)

うつ状態の治療で最も大切なのは休養であることは前述しました。学校や仕事のために休養が十分にとれないことはよくあります。実際、薬物治療を受けながら通院・通学をする方はたくさんおられます。治療的な観点からはこれは中途半端な治療なのですが、社会的観点からは致し方のないことかも知れません。したがって休養するかどうかの分岐点は病状の程度と周辺状況の組み合わせで決まってきます(重症で本人の意思を尊重し難い場合も稀にあります)。また休養するか否かで薬剤の処方もずいぶんと違いがあります。「休んで頂いたら思い切った薬物治療もできるのに…」と思うことがよくあります。うつになる前に休養を上手にとりたいものです。

睡眠について4

概日リズム障害(CRSD)だけでは睡眠自体は十分に摂れていることになります。ただし社会生活とは位相がずれているので、出勤できない・登校できない、生活で必要なことをしようとしても相手は眠っている等の問題が生じます。CRSDは睡眠障害ですが不眠症とは言えません。睡眠の質や量の低下が問題になるのが不眠症です。それでは不眠症での具体的な問題は何でしょうか?睡眠の意味・意義について考察する必要があります。「睡眠不足だとどんな不都合が生じるのか?」とお考え下さい。

睡眠について3

「早や寝早や起き」が死語になったような現代社会です。睡眠を削ってまでの残業や受験勉強、夜勤勤務、深夜営業のコンビニやレストラン、休日は起床時刻が遅くなること。まるで‘夜間に睡眠を摂るな’と言っているようです。偶々の夜更しではなく、夜更しが固定してしまうと概日リズムが社会とずれたまま固定してしまいます。これを元に戻すことは大変です。時差ぼけ(ジェット・ラグ)は一過性の乱れです(それでも回復に数日を要します)が、習慣的な夜更しはなかなか回復しないようです。

うつ状態、うつ病について12(回復のために2)

うつ状態とは簡単に言うと精神的エネルギー水準の低下した状態です。気分を景気に喩えれば不景気です。景気対策としては、ケインズ的財政政策、小泉的構造改革、フリードマン的金融政策、森下泰(森下仁丹創業者)的ケチケチ大作戦等があります。財政金融政策は薬物治療に、構造改革は環境調整に、ケチケチ大作戦(エネルギーを貯め、その無駄遣いをやめる)は休養に概ね相当します。治療は謂わばこれらのポリシーミックスですが、最も痛みを伴わないのが休養です。抗うつ薬の過量投与や周囲との軋轢が最も少ない訳です。

うつ状態、うつ病について11(回復のために1)

回復の基本は休養です。ただしこの休養の意味が難しいのです。一般に休養というと、休暇をとる、休職する、残業を減らす、労働時間を短縮する等ですが、休養の最中に自ら課題を設けたり、多少のエネルギー回復で元のペースへ戻ろうとしたりしてしまうケースが多いのです。うつの症状や治療薬はそれほどバリエーションはありませんが(重症度や適合する薬剤は夫々ですが)、休養の考え方は多種多様で、なかには「休養」の意味を勘違いされている方も多いのが現状です。

睡眠について2

「朝に起き、夜に眠る」。当たり前のことですが、睡眠覚醒のリズムだけではなく、体温や血圧、ホルモン分泌なども一日の中でリズムを持っています。これを約一日という意味で概日リズムと言います。海外旅行での時差ボケは私たちには概日リズムがあるからです。脳の視交叉上核にその概日リズムを司る「体内時計」があると言われています。睡眠障害の一部は概日リズムの乱れで説明出来ます。朝日を浴びることは体内時計を朝にリセットする方法です。現代は、朝にきちんと目覚めるという当たり前のことが出来にくい時代です。

睡眠について1

「動物はなぜ眠るのか?」。睡眠を摂ることは当然のことなのですが、このように改めて問われると答えることに困窮します。睡眠不足の翌日は、頭や体の働きが悪くなったように感じることから、睡眠によって生活の質が向上することが解ります。それでは「一日中眠っていればいいのか?」と問われると何もしない人生になってしまいます。つまり「適切に眠る」ことが大切ですね。眠れないことも眠りすぎることも、眠る時間帯も問題となります。

うつ状態、うつ病について10(強制水泳テスト)

動物モデルにより様々な疾患が研究されます。うつ状態では強制水泳テストがあります。マウスを水流に晒しエンドレスに泳がせるという動物愛護団体からはお叱りを受けそうなモデルです。あきらめて泳ぐのをやめる時間(無動時間)がうつの程度の指標とされます。抗うつ薬を処方されたマウスは無動時間が短縮されるそうです。実際の臨床では、抗うつ薬を処方するより水流を止めるべきです。

うつ、うつ状態、うつ病について9(社会病理論)

かつて、不登校やひきこもりという一種の「やる気のなさ」に対して退却や回避の修飾語がついた「抑うつ」が議論されました。個人の病理とともに社会病理も議論されました。また抑うつの状態像が古典的な抑うつと異なることもポイントでした。疲弊うつ病の概念もかなり社会病理の視点を含んでいます。疲労困憊からうつ病への深化を促進する要素を現在社会が有していることは推測できます。ただし社会病理論は実証や検証の点で曖昧な部分を含んでいます。その点で医学的な研究のテーマには向かない宿命を有しています。むしろ社会学や心理学が多くを語る状況です。