和歌山県和歌山市美園町のメンタルクリニックおおや

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おおや通信
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うつ状態、うつ病について23(治療5)

SSRIやSNRIといった新しい抗うつ薬は爆発的と言えるほど処方されています。これを、「うつ病患者さんが増えた」とみるか、「安易に処方されすぎている」とみるかは意見の分かれるところです。私見としては、そのどちらも正解のように思います。副作用は少ないもののやはり存在しますし、古いタイプの抗うつ薬に良好に反応する患者さんもたくさんおられます。抗うつ薬の種類も量も診察を通して試行錯誤するしかないのだと思っています。

診断基準の曖昧さ4

前記のような程度の問題は、診断者の判断が優先されるとすれば主観的な診断になる可能性があります。そこで可能な限り客観的な診断を求めようとしても、微妙な程度の差であればあるほど診断者間で違いが出ます。これは避けられないことです。また、ある一人の診断者でもある時は積極的に、ある時には消極的に診断せざるをえない状況があります。例えば、「診断をするが後は何も治療できない、フォローできない」状況では診断は控え目にならざるをえません。ダブル・スタンダード(二枚舌)との叱責を受けることもあるでしょうが、逆に「明確に診断しても誰のためにもならない」状況もありえます。客観科学の指向にも限界がある訳です。現実はそれほどクリア・カットではありません。

診断基準の曖昧さ3

例えば、「質的には発達障害だが程度ととしては軽い状況である」と診断者が判断したとします。このとき、「発達障害」と診断すべきでしょうか?或いは、すべきではないでしょうか? 通常、質的な異常があっても臨床閾値以下であれば診断しないことが本筋であると私は考えます。しかし、白か黒かを求められるとどのように伝えればいいのか困惑します。このような問題が生じやすい疾患があります。発達障害や人格障害、PTSD等です。程度の問題は質的な問題に比べ診断者と本人や周囲との受け止め方に齟齬が生じやすいのです。

睡眠について14(昼夜逆転5)

昼夜逆転の治療は簡単ではありません。夜23時から翌朝6時までの睡眠を目標とした場合、7〜8時間の睡眠相のズレを前方に改善しなくてはなりません。実際は数ヶ月をかけて治療しますが、人の体内時計は25時間周期ですから、途中改善が見られても気を抜くと後方に行きやすいためすぐに昼夜逆転に戻ってしまうのです。入眠時刻を早めるよりは起床時刻を早める発想のほうが適切です。ただし無理に起こしても、自律神経やホルモン系はまだ眠っているので起こされた本人は苦痛を感じます。うつ状態で朝の調子が悪いことや二度寝が生じやすいこともこの理由で一部説明可能です。

睡眠について13(昼夜逆転4)

人の本来の25時間周期を24時間に同調させる外的な因子はいくつか考えられます。朝日であったり、目覚し時計の音、正午のチャイム、終業時刻、日々の日課等です。これら同調因子の刺激を受けて、私たちは24時間周期で生きています。外的な刺激がないと25時間周期となり、睡眠・覚醒リズムが一日一時間ずつ遅くなってくる訳です。最大の同調因子は朝の日光です。これに暴露されるとその14時間後に脳内のメラトニンという一種の睡眠物質が増加します。朝日は外的因子であり、内的な睡眠物質を誘導している訳です。

睡眠について12(昼夜逆転3)

24時間周期を持つ体内のリズムは睡眠-覚醒だけではありません。体温や血圧、ある種のホルモン等も24時間周期を有しています。大雑把な言い方ですが、自律神経のリズムも24時間周期です。昼夜逆転の状態ではこれらリズムも昼夜逆転していると考えられます。昼夜逆転で固まった人が無理に日中覚醒しているとします。しかし自律神経は眠った状態のままです。頭の覚醒と体の覚醒の位相がずれた状態です。これでは、起きている時の体調が優れず、頭も回転しないのは当然です。

睡眠について11(昼夜逆転2)

通常、人間の体内時計は約25時間周期です。社会的時計(地球の自転)は24時間ですから、放って置くと人間は毎日一時間入眠や覚醒時刻が遅くなってくることになります。25時間周期を24時間周期に同調させる刺激によって、24時間周期で生活しています。その刺激(同調因子)にはいくつかありますが、最も重要なものは太陽です。人工的な光がない時代ではおそらく人間は日の出とともに起き、日の入りとともに入眠したのではないでしょうか?

睡眠について10(昼夜逆転1)

睡眠相が遅延して固定する状態があります。簡単に言えば、早寝早起の逆です。この極致が昼夜逆転です。本人が起きている時は社会が眠っており、本人が眠っている時は社会が起きていることになります。これを元に戻すことはかなり困難です。その理由について次回より考えていきたいと思っています。

うつ状態、うつ病について22(治療4)

数年前から抗うつ薬としてSSRIとSNRIが登場しました。前者はセロトニン系に、後者はセロトニンとノルアドレナリン系に選択的に作用するとされています。それまでの抗うつ薬はコリン系を遮断することで副作用(便秘、口渇、眠気、霧視等)が生じました。この抗コリン作用が無いという点がSSRIやSNRIの利点とされています。

うつ状態、うつ病について21(治療3)

抗うつ薬の歴史は三環系抗うつ薬から始まります。これらでは便秘や口渇、排尿困難、眠気や倦怠感が副作用として問題でした。これらはうつ状態の特徴的な症状でもあり、服薬により病状が悪化したように思われる患者さんが多くおられました。この副作用をマイルドにしたのが四環系抗うつ薬です。10年ほど前までは、これらに抗精神病薬(焦燥感や自殺念慮の強い場合)をミックスして薬物治療が行われていました。服薬自体がかなり辛いものだった訳です。ただし数ヵ月後の治療成績自体は悪いものではありませんでした。